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氷見牛を育てている生産農家

サブサイトタイトル氷見の地域ストーリー

ページID:0001446掲載日:2016年2月29日更新印刷用ページを表示する
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氷見牛を育てている生産農家

氷見牛を育てているのはどんな人なのか、どのように育てているのか、3軒の生産者の方に、それぞれの思いを聞いてみました。

氷見市畜産組合長として、生産農家を牽引する

干場 仁 さん

JA氷見が母体の法人経営で、繁殖も行いながら肥育している

JAアグリ さん

氷見牛の肥育技術向上と流通拡大に情熱を燃やすパイオニア

田中 賢治 さん

氷見市畜産組合長として、生産農家を牽引する
干場 仁 さん

「氷見牛」が人気になるのは嬉しいことですが、生産が追いつかない。
「氷見牛」の安定供給のために、農家が一丸となって、出荷頭数を増やしていきたいです

干場さんが牛の肥育を始めたのは、ちょうどオイルショックの頃。当時、子牛の値段が非常に安く、農協が牛の肥育を奨励していて、初期投資に必要なお金を貸し付けてもらえたので、じゃあ、やってみようかということになり、それから40年、今では80頭を肥育しています。

現在の生産者は、同じような経緯で、干場さんと同じ頃に始めた方が多く、いわば、苦労を共にして来た同士。勉強会を開くなどして生産者一人ひとりが肥育技術を磨き、富山県産の中でも氷見の牛は群を抜いて高い評価をもらえるまでになりました。そこで、「氷見牛」として、他の牛と差別化して売り出すことにしたのです。最初は全く相手にされなかったのですが、肉牛の品評会である様々な共進会で、優秀な成績をとるようになると、徐々に「氷見牛」を認知してもらえるようになりました。
肥育技術もさらにレベルアップして、今では、最高でA5ランクまである肉質等級の判定基準で、平均でも上位等級(A4ランク以上)が85%以上、100%に近い時もあるほど、高品質を保っています。

おかげで、最高級黒毛和牛「氷見牛」として、県外にも知られるようになったものの、出荷頭数が少ないため、生産が追いつかず、まだまだ県外への流通は少ないのだそうです。

現在、氷見市畜産組合長でもある干場さんは、「氷見牛」を安定して供給するには、繁殖農家を増やしたいと考えています。
例えば、耕作を放棄した田んぼを利用して、繁殖牛を放牧させれば、雑草で覆いつくされ荒れ放題となっている田んぼの見映えもよくなるし、見通しがよくなり、猪の出没も抑えられるため、一石二鳥。
しかし、生産者の高齢化と後継者不足で、思うように進んでいないのが現状で、そんな「氷見牛」への愛情と苦悩を淡々と語ってくれました。

自分たちが育てた「氷見牛」は、全国のブランド牛と比べても遜色ないと、自信を持って言う干場さん。

「氷見牛」が全国に流通するには、まだ少し時間がかかるかもしれませんが、「氷見牛」を食べてみたい人は、ぜひ氷見に足を運んでくださいね。
それだけの価値はありますよ!

JA氷見が母体の法人経営で、繁殖も行いながら肥育している
JAアグリ さん

安全で、おいしいお肉になってもらうために、愛情をこめて、一頭一頭、注意深く見守っています

JAアグリさんの牛舎にお邪魔してみると、一番手前の囲みに、昨日生まれたばかりという子牛を見ることができました。まだ毛が濡れていて、本当にかわいい!

JAアグリさんは、繁殖も手がけていて、毎月2頭ずつ人工受精させます。毎月4頭ずつ出荷するため、足りない分は肥育で補っています。いわば肥育と繁殖の併用型。生まれた子牛は、雄は去勢し、雌は血統や母体の状態をみて、繁殖に回すかを決めるのだそうです。

ここの牛舎は、とても整然としていて、同じ月齢、同じような血統の牛が4頭ずつ、手前から奥へ向かって月齢の若い順に、一囲いの中に入れられており、いわばライン化されているのが特徴です。800日以上、27〜30カ月未満で出荷されます。
出荷されると一列ずつ牛を奥へずらします。このため、だいたいその列の囲いには、いつも同じくらいの月齢の牛がいることになり、異常などがあれば発見しやすいのだそうです。

肥育でいちばん大事なのは、飼料です。
一頭一頭を注意深く見極めながら、飼料に使うビタミンのコントロールをするのだそうです。
個体差や、血統によってもさしの入り方が違ってくるので、何年かかけて、いちばんいいビタミンコントロールをさぐるといいます。

出荷6カ月前からは、一日1キロ、氷見で収穫した飼料米を与えます。これにより、脂の質がよくなり、よいさしが入るのだそうです。
美味しい牛肉を作るために、様々な工夫が施されているのですね。

目の縁が白くなり、毛が枯れてきてかさかさになってくると出荷間近。あとはタイミングをみて出荷されます。

牛1頭からとれる食肉部位は40%もありません。仮に800Kgの牛なら300Kgほど。牛肉が高いのも仕方のないことかもしれませんね。
これから牛肉を食べる時は、生産者と牛さんに感謝して、ありがたくいただきたいと思います。

氷見牛の肥育技術向上と流通拡大に情熱を燃やすパイオニア
田中 賢治 さん

肥育技術に終わりはありません。常に勉強なんです。
一番気をつけなければならないと思っていることは、
買いに来てくれたお客さんの期待を絶対に裏切らないこと。
いつも最高の肉を提供できるよう努力してしていきたいです

田中さんは、5歳の頃から42年間、牛の肥育に携わってきました。
実家が7頭の牛を肥育していて、いつかは自分も牛を飼いたいと思い、畜産科の高校を出ましたが、父親に「一度、世の中を見てからまた考えろ」と言われ、それならと、関連のある肉屋さんに7年間勤めたそうです。現在、精肉店と焼肉店を経営されている田中さんは、その頃の修行が今、大変役立っているといいます。
その後、本格的に牛の肥育を始め、今では80頭を肥育しており、近々現在の牛舎の下にもう一棟牛舎を建て、頭数を増やす予定とのこと。

田中さんは、平成7年、「氷見牛」がブランド化した折、様々な機会を利用してPRに奔走。農業祭で串焼きにして出したり、市内のスーパーや専門店、焼肉店を回ったりしましたが、取り扱ってくれるところはどこも無かったそうです。その頃は、有名な産地を店の看板にしているところが多く、そうでないと客が入らなかったのです。

しかし、平成13年にBSE問題が起こって、各県が自県の牛肉を販売するようになり、県外の牛肉を扱わなくなったため、氷見牛を取り扱う店も増えてきました。田中さんが自分の店を持ちたいと思ったのも、ちょうどその頃。連日のようにBSE関連のニュースで、まるで日本中の牛が罹患しているような誤解を招く報道に、憤りを感じていた田中さん。牛肉の価格も風評被害により半値近くにまで下がり、自分たちの育てた牛肉は 安全でおいしい肉であることを消費者に知ってもらいたいという思いから、翌年の平成14年4月、精肉店・焼肉店をオープンさせました。
そのかいあって、徐々に「氷見牛」が認められるようになってきたのです。

肉の評価を行う共進会で、田中さんをはじめ、「氷見牛」の生産農家が度々優秀な成績を収めるようになり、「氷見牛」の評価がますます上がっています。

肥育は何十年やっていてもこれでいいということはない。常に勉強ですという田中さん。同じ飼料メーカーで頼んでもその年その年で違うことがあるため、いつも同じというわけにはいかないのだそうです。
また、飼料によってはあえて大手ではないメーカーのものを使ったり、様々に工夫をしています。

肉の旨味は脂肪の質とその入り具合で決まりますが、美味しいかどうかは食べてみないとわからないそうです。見た目がきれいな肉でも、食べてみると意外と淡白なものもあるそうで、自分のところの肉はもちろん、機会があれば他の産地の牛肉を食べ比べ、常に研究しているとのこと。

田中さんがいちばん気をつけたいと思っているのは、店では毎日普通に販売しているけれども、買いにくるお客さんは、年に一度、月に一度のご馳走だと思って買いに来てくださっている。そんなお客さんの期待外れにならないことなんだそうです。

田中さんは、2010年、氷見牛の品質や生産性の向上に努めるとともに、氷見牛のブランド化に貢献したとして、全国農業コンクール全国大会において農林水産大臣賞を受賞しました。しかし、まだまだ課題が多いといいます。

氷見牛は出荷頭数が少ないため、今は生産が追いついていかない状態です。後継者も少なく、高齢化にともない、やめていく農家がある中で、どうやって出荷頭数を増やしていくかがいちばん難しいとのこと。

自分の利益だけを追求するのではなく、氷見牛全体の品質と生産性の向上を考える田中さんの熱い情熱とジレンマが伝わってきます。